中野耕志 X テレフォトレンズ/スコープ PROMINARレポート

第1回
PROMINAR 500mm F5.6 FL ファーストインプレッション
PROMINAR 500mm F5.6 FL / TX10

このサイトの作例写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。 

PROMINAR 500mm F5.6 FL ファーストインプレッション Report

写真:PROMINAR 500mm F5.6 FL

野鳥撮影の標準レンズともいえる大口径超望遠レンズは、その高画質と引き替えに、大きい、重い、値段が高いというデメリットもあります。
とくに 多くの野鳥写真家が使う500mmF4クラスでは、長さ約40cm、重さ約4kg、価格は100万円と、とうてい気軽に扱えるものではありません。他の選択肢としては400~500mmクラスまでカバーする小口径ズームレンズもありますが、これらのレンズで満足できる画質が得られるものは皆無といっても過言ではないでしょう。

私はかねてから大きさや価格がお手頃な500mmF5.6クラスのレンズを待ち望んでいたのですが、この PROMINAR 500mm F5.6 FL(以下、プロミナー500mmと表記)が発表されたときは喜びとともに若干の戸惑いを覚えました。なぜならばオートフォーカスや手ブレ補正機能全盛のこの時代に、あえてマニュアルフォーカス、実絞りという仕様で市場に投入されたからです。しかし見方を変えればオートフォーカスや手ブレ補正機能を得るための“余分な”光学系を省略できる分、シンプルな光学系で高画質を追求できるということです。7群7枚のシンプルな光学系には高級硝材の最高峰として名高い フローライトクリスタル〔蛍石〕1枚と、XDレンズを2枚採用し高画質を追求しています。
ちなみに2大カメラメーカーの500mmF4は、14枚~17 枚と、多くのレンズを使う複雑な光学系になっており、これは重量の増加や価格の上昇、そして故障や不具合のリスクにもつながる可能性があるともいえるでしょう。

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写真:レンズ比較

さて実際にプロミナー500mm/TX10を手にしてみると、全長こそは34cmと若干長いものの、重量が2kg未満と500mmF4の約半分で、重すぎず軽すぎずちょうど良い感じです。フードを外せばコーワスポッティングスコープのフラッグシップTSN-884と同程度の大きさといえば分かりやすいでしょうか。

最も気になるのはその描写性能ですが、スポッティングスコープ の代名詞にもなっている”PROMINAR”の名を冠しているだけに、その名に恥じない描写性能を備えているというのが私の第一印象です。私は普段か ら500mmF4クラスをメイン機材として使用しておりその画質のキレ味を基準としているので、画質に対する要求はシビアだと自負しているのですが、プロミナー500mmはこのクラスではダントツのキレ味だと感じました。なにより絞り開放から安心して使える画質はうれしいですね。もちろん慣れないとマニュアルフォーカスという操作面での難しさはあるかもしれませんが、私自身は普段から野鳥写真ではマニュアルフォーカスで撮影することが多いので、慣れの問題だと思います。

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このレンズのもうひとつの特長として、システムの拡張性の高さがあります。
一眼レフまたはミラーレス一眼を装着し、マウントアダプターTX10使用で500mmF5.6として使うのが基本スタイルではありますが、マウントアダプターをTX07またはTX17に変更することでそれぞれ 350mmF4、850mmF9.6のレンズに変身させることができます。
さらにマウントアダプター部分をプリズムユニットTP-88EC1に付 け替えることでスポッティングスコープにもなるし、もちろんデジスコも楽しめます。またはプリズムユニットTP-88EC1にフォトビデオアダプターTSN-VA3などのカメラアダプター類を使用することで高画質のデジスコ/ビデスコ撮影も可能になります。
山岳地や海外旅行など、荷物制限 のある場合でもマスターレンズとマウントアダプター、プリズムユニットTP-88EC1とアイピースを持参すれば、撮影と観察の両方を1本のレンズとアクセサリーでまかなえるので、今までのように超望遠レンズとスポッティングスコープの2本を持ち歩く必要はなくなります。
このようにプロミナー500mmは、野鳥観察・撮影に関するあらゆる使い方を、これ1本でまかなうことができるわけで、カメラ専用レンズやスポッティングスコープには真似できないシステム拡張性があります。

システム図

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写真:TP-88EC1接続時

大きな可能性を秘めたプロミナー500mmですが、発売されたばかりでその画質や使い勝手、いろいろなカメラとの組み合わせや相性などの情報はあまり出回っていないようです。
おそらく多くの方は興味津々ながらしばらく様子を見ているのではないでしょうか。
今回はファース トインプレッションということで全体的な印象を述べましたが、次回からはいろいろな機材との組み合わせやシチュエーション別の撮影など、プロミナー500mmをとことん使いこなして撮影方法や使い方をご紹介していきたいと思います。

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