叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

1月のテーマ
「雪」が降った日は身近な公園で撮ろう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

写真:スズメ
柵の上に積もった雪の上に集まったスズメたち。公園にある無粋な金属製の柵も雪が積もれば絶好の撮影ポイントに変身します。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

冬の雪景色は、風景写真を撮るうえではもちろん、野鳥写真にとっても絶好のシチュエーションです。雪は汚いもの、人工的なものを隠し、野鳥を撮影する舞台を提供してくれます。雪が降ったら、雪が積もったら、撮影のチャンスと考えましょう

雪が降ったからといって、遠くの撮影地まで出かける必要はありません。むしろ、日ごろから行き慣れた近所の公園など、身近な撮影地のほうが、どこに何があり、どんな鳥が来るか把握でき、撮影のチャンスも多くなります。

雪が降ったのを見て、「どこへ撮りに行こうか」と考えるのではなく、「雪が降ったらここで撮ろう」と決めておくといいでしょう。雪が降り始めたことに気づいたら、翌朝は早起きして撮影に出発です。

日ごろからの観察が雪の日の撮影の役に立つ

写真:トラツグミ 地面を歩きまわるトラツグミ。雪のないときは絵にならないシーンですが、地面を覆う雪、降る雪がドラマチックに演出してくれます。このとき、そこに鳥の姿がなくても構図が成立するように撮るのがポイントです。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

撮影する人間にとって雪は余計なものを隠してくれるありがたいものですが、鳥にとってはエサを見つけにくくする困った存在です。雪の日の野鳥は、採餌するのに苦労します。そんなとき、公園や池、湖で行われている餌付けは、鳥にとって貴重な食料源になります。野鳥もエサを見つけにくいときは、餌付けが行われている場所に集まるものです。

日ごろから近所の餌付けされている場所を知っておけば、雪の日は迷わず、その場所に出かけてみましょう。むやみに歩きまわるより、確実に野鳥が撮れるはずです。

また、庭にエサ台を設けている人は自宅で撮影するのもいいでしょう。人工物であるエサ台も、雪が積もることで画面の中で目立たなくなりますし、雪の情景として見れば、気にならなくなります。

なお、雪が降り続いているのときは、カメラやレンズが雪をかぶらないようにレインカバーを被せる必要があります。カサを差しながらの撮影は難しいので、レインウエアもあったほうがいいでしょう。

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ロウバイやウメが咲く時期に雪が降ったらシャッターチャンス

写真:ヒヨドリ 雪の降る中、甘い花蜜の匂いに惹かれ、やってきたヒヨドリ。花蜜の量が少ないこともあり、花ごとついばんでしまいます。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

雪の多い地方では難しいでしょうが、1~2月にロウバイやウメの花が咲く、関東以南の太平洋側では、雪の中で花をついばむ野鳥の姿が撮れることがあります。

ロウバイは、1月から2月の寒い時期、黄色いロウ細工を思わせる小さな花をつける落葉低木です。花がウメに似ており、名前に「バイ」とあるのでウメの仲間だと誤解されがちですが、まったく種類の異なる木です。花蜜は少ないのですが甘いこともあり、エサが採れない雪の日には、普段、花の蜜を吸わない雑食性の小鳥もついばみにやってきます。

2月以降に咲くウメも同様です。雪が降って、エサが採れないときは、ウメの蜜を吸ったり、花ごとついばんだりします。日ごろからロウバイやウメの咲き具合を調べておき、雪が降ったら撮影のチャンスだと考え、花が咲いている場所に出かけましょう。

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雪の写り方をイメージしながら構図やシャッター速度を決める

写真:ダイサギ 粉雪が舞う水辺にたたずむダイサギ。周囲より暗い水面をバックに撮ることで、雪が目立ちます。また、このときは水辺まで歩いていくのが難しかったので、車の中から撮影しました。
PROMINAR 500mm F5.6FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

雪が降っているときは、雪の写り方も意識したいところです。雪が降っていたり、舞っている様子がわかるように写すには、暗い背景を選ぶことが重要です。木立の陰になった部分や池の水面などは周囲より暗いので、降る雪の背景として最適です。

また、雪質によって写り方も変わります。スキー愛好家にとっては乾いて軽い“粉雪”が好まれますが、これを写真に撮るときれいに写りません。むしろ、湿って重くなった“ぼたん雪”のほうが降っている感じが出て、写真的には好ましい雪質だといえます。

雪の写り方というと、シャッター速度も関係してきます。左のダイサギの写真は、粉雪を撮ったものですが、シャッター速度は1/320秒と少し速めです。雪は流れず、空中に静止しているように写っています。上のヒヨドリの写真は1/50秒、トラツグミは1/60秒と遅めなので、雪が流れています。シャッター速度が遅すぎても不自然な写り方をするので、鳥がぶれないようにタイミングを図り、シャッター速度は1/60秒前後で撮るといいでしょう。

なお、晴れた日の雪原を撮る場合には、露出のコントロールが難しいですが、雪が降っているシーンを撮る場合は、露出補正しないか、補正をかけたとしてもプラス1程度までで十分です。このとき、スポット測光を使い、露出を合わせたい場所で露出を固定して撮るようにすると確実です。

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撮影した野鳥や季節の花をカレンダーに書き込もう

写真:ハンノキ ハンノキの実をマヒワが好むことを知り、ハンノキがある場所を見つけておけば、マヒワが実を食べに来るのを待ち構えて撮ることができます。
PROMINAR 500mm F5.6 FL TX10(500mm)+EOS7Dで撮影。

野鳥撮影をより深く楽しむために、自分だけのカレンダーを作ることをオススメします。撮影に出かけた日は、撮れた鳥の名前、撮れなかったが見かけた鳥の名前、撮影場所などをカレンダーに書き込みます。野鳥だけでなく、ウメやサクラなどの花が咲いた時期、果実や紅葉が色づき始めた時期など、気がついたことをカレンダーに書いていきます。

この書き込みが1年分たまったら、世界に1つだけの「マイカレンダー」の出来上がりです。季節の変化と野鳥の行動は深く結びついており、毎年、同じ時期に同じ種類の鳥が姿を見せ、同じような行動をとります。カレンダー作りを1年で終わらせず、新しいカレンダーに書き写し、データを書き加えていくと、さらにデータの精度が高まり、野鳥に対する知識も自然に身につきます。この自分だけの撮影データは、野鳥撮影を楽しむうえで、あなたの宝となるはずです。ぜひ「マイカレンダー」作りに取り組み、野鳥撮影に役立ててください。

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