叶内拓哉の野鳥撮影カレンダー

季節ごとの"野鳥の撮り方"を詳しく紹介!

4月のテーマ
「春の渡り」シーズンは干潟や里山で撮ろう
写真・解説:叶内拓哉(野鳥写真家)

このサイトの写真はPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影しています。(一部を除く) 

写真:ツバメ
ツバメは、例年なら3月には姿を現し、早いものは4月上旬から巣作りを始めるが、今年は少々遅く始まったようだ。川原や水溜まりで巣材にする泥などを集める姿が、これから1ヶ月間は観察できるだろう。PROMINAR500mmF5.6FL/TX10(500mm)で撮影。

桜前線が北上するにつれ、冬鳥は北の繁殖地へ渡り、夏鳥は南から渡ってきます。日本から渡ってゆく鳥、日本へ渡ってくる鳥が交錯するのが、「春の渡り」です。

この「春の渡り」の季節になると、温暖な低緯度地域で越冬したオオルリやキビタキ、ツバメ、コアジサシなどが、姿を見せるようになります。また、南の越冬地から北の繁殖地へ渡る途中、日本を訪れる旅鳥が見られるのも4〜5月ごろ。シギやチドリの多くがこの旅鳥です。

春の明るく、暖かい日差しが心地よいこの時期、フィールドに出て、渡ってきたばかりの夏鳥と旅鳥を撮りましょう。

干潟に来るシギやチドリは満潮時を狙って撮影する

写真:オオソリハシシギ 干潟の浅瀬で撮ったオオソリハシシギ。周囲がすべて水面となる場合は画面が単調になりがちなので、潮が満ちるときの波を生かして撮るのがポイントです。潮が引いてしまった場所では、カニや貝殻などを絡めるといいアクセントになります。TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

海の干満によって、陸地になったり、海に沈んだりする干潟は、シギやチドリが好む場所です。春と秋の2回、日本の干潟や河口はたくさんのシギやチドリで賑わいます。

干潟にはカニやゴカイなどが生息しており、シギやチドリはこれらの生き物を捕食するために飛来します。彼らは潮が引き、水深が浅くなった場所、砂や泥が顔をのぞかせた場所を歩き回り、地面をクチバシで突いて食べ物をとります。そのため、干潟で撮影する場合は、まず潮の干満を知る必要があります。

干潮時は陸地が広がり、撮りやすいと考えてしまいがちですが、むしろ満潮時の後の方が撮りやすいでしょう。満潮から潮が引き始めるとき、最初に現れる陸地にシギやチドリが飛んできます。その場所をあらかじめ調べておき、待ちかまえて撮れば、確実に鳥の姿を捉えることができるのです。

この最良の撮影ポイントを知るコツは、潮見表などを元に干潟の満潮の時間をはじき出し、満潮の少し前から観察を始め、潮が満ちたときに最後まで水没しない場所を探すことです。そこは、満潮後に最初に潮が引く場所でもあります。こうした場所がよく見える所に三脚を立て、潮が引くのを待つことが干潟撮影を成功させる所です。

なお、撮影する場所は、対象が逆光にならないように太陽を背にして撮れる順光の位置を選ぶことも重要です。羽の模様や色を正確に写し撮るには順光で撮るようにしましょう。

pagetop

飛行シーンの撮影はカモメやサギで始めよう

写真:ホイグリンカモメ クチバシに貝をくわえて飛んでゆくホイグリンカモメ。翼が開ききった瞬間を狙って撮りました。飛んでいるカモメは横から狙うと比較的撮りやすいので、飛行写真の練習にも最適です。TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

干潟を含め、海辺ではカモメやアジサシが飛んでいる姿をよく見かけます。野鳥の飛行シーンを撮るのは難しいものですが、直線的に飛ぶカモメやアジサシはファインダーで捉えやすく、飛行写真の練習に最適な被写体です。

見晴らしのいい場所でカメラを構え、ファインダーに鳥の姿を捉えたら、そのまま飛んでゆく方向にカメラを振ります。素早くピントを合わせたら撮影します。翼を広げた瞬間に撮るのがポイントです。タイミングをつかむのが難しければ、連写することでいい瞬間を捉えられる場合もあります。

水辺の鳥は開けた場所を飛ぶため、周囲が明るく、シャッタースピードを速くできます。最初はあまりアップで撮ることに固執せず、空間を広く取るようにしましょう。その際、鳥の進行方向を広くあけて撮ると、見栄えのよい写真になります。

カモメやアジサシのほか、シギの仲間も直線的に飛ぶため、飛行写真を撮り始めるときの被写体としてオススメです。

pagetop

オオルリなどの夏鳥を里山で待ちかまえて撮る

写真:オオルリ♂ 里山を流れる支流の岸で撮影したオオルリです。渡ってきたばかりのオオルリは、まだ警戒心も薄く、わりと近づいて撮れました。背後は竹藪ですが、止まっている枝のあたりは比較的明るく、鮮やかな羽の色もよく出ています。PROMINAR500mmF5.6FL/TX17(850mm)で撮影。

東南アジアで越冬し、春の訪れとともに日本へ渡ってくるのが夏鳥です。美しい姿とさえずりで人気の高いオオルリやキビタキもこの夏鳥ですが、繁殖期には山地の樹林帯に入ってしまうため撮影は容易ではありません。しかし、渡ってきたばかりの4月中旬から5月上旬は都市近郊の標高の低い場所でも見ることができ、撮影のチャンスです。

彼らが好むのは、食べ物となる昆虫などが多い、田畑や木立がある場所です。具体的には里山と呼ばれる適度に自然が残るエリアで、平地と山地が接する谷戸とそこを流れる支流(沢)の周辺で彼らを見つけることができます。

食べ物となるゲジゲジやヤスデ、昆虫は、日が当たり、周囲より暖かくなるアスファルト道路やコンクリート護岸、草が生えていない岩の上などを好みます。オオルリやキビタキなどの夏鳥は、こうした節足動物などが集まる場所を見渡せる枝に止まり、獲物を探します。こうした場所は木立の片側が道路や川で開けていることが多く、鳥の姿を見つけやすく、比較的明るいため、撮影に最適です。

なお、道路上に三脚を立てると危険だったり、人に迷惑をかけたりするので、撮影する場所には注意しましょう。

pagetop

野鳥が水浴びをするポイントを見つける

写真:クロツグミ♀ 周囲に草が生えた水場で水浴びをするクロツグミのメス。ほとんど鳴かないために見つけにくい野鳥のメスも、水辺には水飲みや水浴びのために毎日来るので、根気強く待てば撮影できる可能性が高まります。TSN-884 PROMINAR+TSN-PZ(680mm)で撮影。

野鳥は食べ物をとり、水を飲むほかに、水浴びをするために水辺を訪れます。羽に付いた汚れを落とし、寄生虫を駆除し、羽毛の防水、保温などの機能を保つために、ほとんどの野鳥が水浴びをします。パシャパシャと水しぶきをあげ、水浴びをする姿は絵になる情景です。

水浴びをする場所は多くの場合決まっており、鳥の行動を注意深く観察することで見つけられます。森であれば水たまり、公園ならば池の人目につきにくい浅い場所、川であれば周囲にヨシなどが茂り、猛禽類から身を守れるような浅瀬など、いくつかのパターンがあります。

野鳥にとってのオアシスである水場を見つけることができれば、さまざまな野鳥を撮ることができます。また、普段はあまり姿を見せない珍しい野鳥も水場を利用するので、根気強く待てば撮影できます。

pagetop

4・5月は多彩な野鳥が撮れる里山や水辺へ出かけよう

写真:サクラの食痕

4月から5月にかけて、干潟には羽を休める旅鳥のシギやチドリが群れ、里山には繁殖地である山地に向かう途中のオオルリやキビタキなどの夏鳥が食べ物を追います。また、繁殖期を前にどの鳥も羽の色つやがよくなり、美しいさえずりを聞かせてくれるこの季節、都市近郊でもさまざまな種類の野鳥が撮れる絶好のチャンスです。野鳥の姿を求めて、フィールドに出かけましょう。

pagetop